Miho Matsubara Houses and Stores . Shizuoka
SEIICHI YAMADA Architect & Associates . photos: © Akinobu Kawabe
Coffee shop and private house on the coast of Japan.
_
計画地は、景勝地として有名な三保松原と御穂神社とを繋ぐ神の道沿いに位置する。以前は訪れる人が減少傾向にあったが、富士山と共に世界遺産となったことがきっかけとなって、現在では国内外から多くの人が訪れる観光地である。 地元でバーを営む建主から、新たな観光資源となるドッグランを併設したガーデンカフェ兼住宅を建てたいという相談を受けた。魅力的な敷地ではあるが、毎日多くの人が往来し、大きな松が一直線に並ぶ強い軸線をもった神の道との接続の仕方を考える必要があった。 三保松原は風景と共に羽衣伝説で有名だが、リサーチに訪れてみると、松を抜ける潮風が心地よく、枝間からのぞく砂浜や青い海がとても印象的だった。それら三保松原の風景を構成する要素を建築に取り込むことで、神の道の軸線を和らげつつも拡張することができないだろうか。 神の道からガーデンまで建物を介して視線が抜けるようにアルミサッシで建物を覆う構成とし、機能、プライバシー、耐力壁が必要な一部を除いて同一規格サイズのサッシを縦横方向に展開した。階高も規格サッシサイズから天井高を割り出すことで決定している。店舗部分では雁行する松並木の印象をもとに一部柱スパンをずらした。それは京都の蓮華寺の柱と庭の関係のように、建物内から庭を見る時に柱上部が視覚から消失することで、感覚的に庭が引き寄せられる効果を期待している。住居部分についてもこの環境を最大限享受することを考え、同様に外部サッシを連続した扉のない一室空間とし風景と繋いだ。また同時に、将来建物すべてをカフェや住居、宿泊施設などへ柔軟に転換できることも視野に入れ計画している。植栽は、神の道の松並木からガーデンテラスの流れで徐々に柔らかな印象となるよう樹木を選定した。 連窓サッシから潮風が抜け、木々が揺らぎ、レースカーテンをなびかせる。神の道を歩く人びとが松並木を抜けてこちらへとやってくる。コーヒーを飲みながらずっとここにある立派な松を見上げる。それぞれの風景を眺め合い、行き来する羽衣の揺らぎのような柔らかな関係性が生まれた。