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MIZAA

Detached house . Aichi

MIZAA . photos: © ToLoLo studio

Tower-like house in Aichi, Japan.
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瀬戸物で知られる瀬戸市は、かつて「幾何学模様に出会える街」として日本遺産への登録を目指した陶器の街であり、市内各所に陶器やタイルによる幾何学模様のモチーフを見ることができる。

そんな幾何学の街に建つ、幾何学平面の住宅である。

一辺6,825mmの正方形を45度ずらして積んだ2枚の床に、それを包絡するギザギザの外皮、八角形の方形屋根がかかっている。

敷地は空地と道路に囲まれた坂の途中にあり、南東の横断歩道は小学校の通学路になっている。そこに、大開口に依らない開放性を求め、同時に小学生たちの通学の記憶の一部になるような「ささやかなランドマーク」でありたいという思いから、塔のような、防御性を持ちつつ中~遠景への眺望を指向する建ち姿を考えた。

内部に入ると平面の幾何学性は消え、体験的には整形の床が屏風状の壁に浮いているように感じられる。床のずれによって生まれた三角形の吹抜けやニッチは矩形の床に対して様々な居場所をつくり、方位に対して等価にあけられた窓からは、ストロボ写真のように周囲の微地形と街並が360°入り込んでくる。

一見複雑な形状だが90度と45度の組み合わせによる架構は比較的施工が容易で、断熱性能を高めたことで四隅の吹抜けによる空気循環がプラスに作用し、エアコン1台で家全体が空調可能となっている。

幾何学形状と同形窓の反復による外観には生活の様相が反映されず、空間がリテラルに開かれているわけではない。だがそれは街を拒絶するのではなく、むしろ地方都市の住宅が「街に建つ」ための、ひとつの戦略だと考えている。

敷地境界線に塀を立て閉じこもることなく、建築自体が街からの視線をポジティブに受け止め、そして内部からは街へと視界が広がってゆく・・・建築が内外の視線を受け止めるキャラクターとして街に定着する。それは、生活を見せることに抵抗感の強い地方都市圏の住み手にとっても受入れられやすい、別の開き方の可能性になり得ないだろうか。

2階の窓辺から外を眺めていると、道行く小学生が時折見上げていく。
犬の散歩の休憩地点にしている方もいる。
庭で水やりをしていると声をかけられることも多いらしい。

瀬戸の陶芸作家と付き合いが多いクライアント夫妻は、器づくりを楽しむように家づくりに向き合い、器を楽しむようにここでの生活を楽しんでくれている。